LPガス・プロパンガス業界は、エネルギー市場の変動や環境規制の強化といった課題に直面しています。ガス業界自体が縮小傾向にあるなか、今後どうなっていくのか気になる方も多いでしょう。
この記事では、業界の現状や将来に向けた課題について詳しく解説し、LPガス・プロパンガス販売・配送業者が勝ち残るためにできることを紹介します。
現在、LPガス・プロパンガスの需要は減少傾向にあります。
しかし、日本LPガス協会が策定した「LPガス産業の中長期展望(改め「LPガス産業の2025年ビジョン」)」によると、LPガス・プロパンガスは依然として重要なエネルギー源として位置づけられています。
クリーンで環境にやさしいエネルギーとしての特性を活かし、石油系燃料等からの燃料転換や、IMO(国際海事機関)の環境規制強化を受けたLPG燃料船の普及など、地球温暖化への貢献が期待されています。
さらに、LPガスは容器に充てんして必要とする場所に設置できる「分散型」と呼ばれる供給形態のため、電力などを介さずに独立して稼働することができます。
万が一の災害時などに電力供給が途絶えたとしても稼働できるため、LPガスはエネルギー供給の「最後の砦」としての役割もあるのです。
そのため、備蓄の実施や中核充てん所の設備強化など、供給体制の強靭化を進める動きも見られています。
前章でお伝えした通り、LPガス・プロパンガスは重要なエネルギー源と考えられていますが、課題がないわけではありません。
続いては、LPガス・プロパンガス業界が抱える課題について詳しく解説します。
オール電化とは、調理や給湯など、使用する熱源のすべてを電力でまかなう住宅です。
「光熱費が安くなる」「火を使わずに安心」などのメリットがうたわれ、新築住宅をオール電化で建てる人や、既存の住宅をオール電化にリフォームする人が増えています。
このオール電化の増加に伴ってガスを使用する機会は減少しており、家庭や企業でのLPガス・プロパンガス需要は低下しています。
特殊性のあるLPガス配送業務は、今後さらに人材不足が深刻化すると予想されています。
実際に、業務を熟知したベテラン社員が高齢となり、新人に向けた教育や人材の柔軟な配置転換が急務であるなど、労働力確保が課題となっているLPガス販売業者も少なくありません。
従来、電気やガスなどのエネルギーは、指定された事業者でしか購入できませんでした。
しかし、2016年に電気、2017年にガスの自由化がスタートし、消費者が自由に事業者を選択できるようになりました。
電気・都市ガスの自由化に伴い、消費者は価格の安いエネルギーを選択する傾向が強まっており、LPガス・プロパンガス業界においても、価格競争が激化しています。
全国LPガス協会が発表した「LPガスビジョン 2030」では、「LPガスの政策的な重要性の高まりを受けて、社会が求める役割を果たしつつ、LPガスの小売、卸売、スタンド等を中心とした会員事業者が将来に亘って健全経営が可能となる事業環境の創出を目指す」と記載があり、2030年を見据えた将来のビジョンとともに、ビジョン実現のためのアクションプランが策定されています。
具体的な取り組みとしては、以下が挙げられます。
出典:全国LPガス協会「LPガスビジョン 2030」
「環境負荷が少ない」「災害時に強い」といったLPガスのメリットを最大限に生かしつつ、業界全体として、安定供給に向けた取り組みを目指していることが分かります。
LPガス・プロパンガスの需要が減少傾向にあるのは事実ですが、業界そのものが消滅するとは考えにくいでしょう。
しかし、企業が経営を持続するためには、業界が直面する課題を克服し、競争力を維持することが求められます。
ここからは、企業がLPガス・プロパンガス業界で勝ち残るためにできること、具体的な取り組みについて紹介します。
取り組みにはさまざまなものがあるため、まずは着手しやすいものから始めてみると良いでしょう。
LPガス販売業者が勝ち残るには、新エネルギーへの切り替えや電気給湯器の販売など、事業拡張を検討することも有益です。
実際に、電気とガスをセットで契約できるプランを用意したり、太陽光発電などの再生可能エネルギー事業に参入しているガス会社もあります。
企業間のM&Aを活用して事業規模を拡大し、競争力を強化することも戦略の一つです。
事業規模を拡大すれば、スケールメリットを活かしたコスト削減や、効率的な運営が可能となります。
実際に、LPガス・プロパンガス業界では、市場の縮小傾向への対応策として、2014年ごろからM&Aが積極的に実施されています。
前述した新エネルギー事業参入やM&Aは、業界内で勝ち残るための有効な手段ではあるものの、実際に着手するにはハードルが高いと感じる方もいるでしょう。
今すぐにでも着手できる取り組みとして、配送先が重複している荷物を複数の事業者が共同で配送する「共同配送」や、効率的な配送計画・ルートを自動で作成してくれる「配送管理システム」などの導入を通じた配送業務の効率化が挙げられます。
これらによってDX(デジタルトランスフォーメーション)を進めることで、業務効率化や人材不足・働き方改革への対応、コスト削減が実現でき、生産性向上につなげられるでしょう。
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災害に強いLPガス・プロパンガスは、エネルギー供給の「最後の砦」としてなくてはならない存在です。
しかし、オール電化の増加や人手不足などを背景に、LPガス・プロパンガス業界は縮小傾向にあります。
LPガス・プロパンガスの販売・配送業者が今後も勝ち残るには、DX(デジタルトランスフォーメーション)による業務効率化が必要不可欠と言えるでしょう。
LPガス・プロパンガス業界の将来に向けて、ぜひ今できることから始めてみてはいかがでしょうか。