カーボンニュートラルは、地球温暖化の進行を防ぐための重要な取り組みです。
再生可能エネルギーの利用やエネルギー効率の向上、植林活動など、世界中でさまざまな取り組みが行われています。
この記事では、カーボンニュートラルとは何か、現状や課題、LPガス業界の取り組みについて分かりやすく解説します。
カーボンニュートラルとは、人間の活動によって排出される二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスの排出量を、吸収量と差し引きして「実質ゼロ」にすることです。
二酸化炭素(CO2)などに代表される温室効果ガスは、地球温暖化に影響を与えると言われています。しかし、温室効果ガスの排出量を完全にゼロにすることは、現実的には難しいでしょう。
そのため、カーボンニュートラルは「排出量をゼロにすること」ではなく、排出量から吸収量を差し引き、「プラスマイナスゼロにすること」を目指すのが特徴です。
カーボンニュートラルと混同されやすい言葉として、「カーボンオフセット」があります。
自らの活動によって排出される温室効果ガスを削減することが難しい場合に、他の場所で行われる削減プロジェクトに投資することで、その排出量を相殺(オフセット)しようという取り組みです。
カーボンオフセットは、カーボンニュートラルの実現を目指す手段の一つです。
カーボンオフセットの投資先としては、森林再生プロジェクトや再生可能エネルギープロジェクト、エネルギー効率化プロジェクト、クリーンエネルギープロジェクトなどが挙げられます。
日本政府は、2050年までにカーボンニュートラルの実現を目指すことを宣言しています。
【2022年度温室効果ガス排出・吸収量(2024年4月発表)】
排出量 | 吸収量 | |
約11億3,500万トン | 約5,020万トン |
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出典:環境省「2022年度の我が国の温室効果ガス排出・吸収量について」
温室効果ガス排出量から吸収量を差し引きした結果は、約10億8,500万トンです。
再生可能エネルギーの普及促進、省エネルギー技術の導入、産業部門における低炭素技術の開発など、具体的な取り組みが進められており、2021年度と比較すると約2.3%(約2,510万トン)の減少、2013年度と比較すると約22.9%(約3億2,210万トン)減少しています。
しかし、2050年までに実質ゼロを目指すとなると、まだ遠い道のりであると言えるでしょう。
日本を含む先進国では再生可能エネルギーの導入が急がれていますが、地理的条件やインフラの制約など、カーボンニュートラルの実現にはいくつかの課題が存在します。
再生可能エネルギーの電力比率は2021年度で約20.3%ですが、カーボンニュートラル実現のためには、この比率をさらに高めることが不可欠です。
また、カーボンニュートラルの効果を検証する仕組みが不十分な点も課題とされています。
現在の計測器には、温室効果ガスを直接測定できないという技術的な問題があり、克服するためには、政府、企業が一体となって取り組むことが必要になるでしょう。
LPガス(液化石油ガス)は、石油や天然ガスから生成されるエネルギー源で、クリーンなエネルギーとして知られています。
災害時にも強く、地震や台風などの自然災害時においても迅速かつ安定した供給が可能です。
LPガス業界では、このガスの特性を活かし、カーボンニュートラルの実現に向けて以下のような取り組みを進めています。
カーボンニュートラルLPガスとは、LPガスの採掘や燃焼時に排出される温室効果ガスをカーボンオフセットすることで、排出量を実質ゼロとみなすエネルギーのことです。
LPガスによって排出される温室効果ガス量を計算し、その量に見合うカーボンオフセットプロジェクトに投資することで排出量を相殺します。
既存の設備や業務内容を変更することなく環境負荷を低減できるため、LPガス業界でも注目されている取り組みです。
グリーンLPガスとは、大気から回収した二酸化炭素(CO2)や植物などの炭素を利用して合成した、環境にやさしいLPガスを指します。
従来の化石燃料由来のLPガスに比べて、温室効果ガス排出量を大幅に削減することができます。
ただし、グリーンLPガスの生成技術はまだ完成していません。
グリーンLPガスの商業化に向けて多くのLPガス事業者や研究機関が連携し、現在も開発が進められています。
LPガスの配送車についても、環境負荷を低減するための取り組みが行われています。
例えば、電動車(EV)やハイブリッド車(HV)、プラグインハイブリッド車(PHV)、燃料電池車(FCV)といった低炭素車両の導入も、カーボンニュートラルの取り組みの一つです。
また、車両の動態管理システムを導入し、エコドライブを推進するLPガス配送事業者もあります。
LPガス配送業務の効率化による燃料消費量の低減も、カーボンニュートラル実現に向けた取り組みです。具体的には、LPWA(Low Power Wide Area)やAI・アルゴリズムを活用した配送予測の高度化、効率的な配送ルートの作成を行う配送管理システムの導入などが挙げられます。
これらによって、配送頻度の削減や最短ルートでの配送ができるようになるため、温室効果ガスの排出量を抑えることにつながるでしょう。
これまで紹介した方法に比べて導入のハードルが低く、事業者単位での取り組みも可能です。
また、共同配送による交錯配送の是正、充てん所・配送センターの統合など、LPガス業界では企業・業界の枠を超えたサプライチェーン全体の効率化も進められています。
関連記事:共同配送とは?メリット・デメリットや解決すべき課題を紹介
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カーボンニュートラルの実現に向けて、LPガス業界でもさまざまなプロジェクトが進行しています。
しかし、記事でご紹介したグリーンLPガスの開発や低炭素車両の導入には莫大なコストがかかるため、LPガス販売・配送事業者にとってはハードルが高いものもあるかもしれません。
カーボンニュートラルへの取り組みで着手しやすいものとして、LPガス配送業務の効率化が挙げられます。
特に、配送管理システムは導入コストも比較的低く、共同配送のように他社と連携せずとも事業者単位での取り組みが可能です。
効率的な配送ルートにより燃料消費量を低減できれば、温室効果ガスの排出量を減らすことができ、カーボンニュートラル実現に寄与します。
生産性が高まることによって、人件費や燃料費など、トータルの配送コストの削減にもつながるでしょう。
LPガス事業者向けに開発された配送管理システムもあるので、ぜひ導入を検討してみてはいかがでしょうか。