LPWAとは?LPガス配送を効率化する無線通信システムの特徴を解説
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近年さまざまな業界でDX化が進んでいますが、配送業界では、2024年問題でも取り上げられているように人手不足や労働時間の多さが問題となり、対策が進められています。
今回紹介する「LPWA」は、さまざまなビジネスシーンで活用されており、LPガス配送の効率化に役立つ開発コンセプトの一つと言えるでしょう。
この記事では、LPWAについて詳しく解説するとともに、LPガス配送にLPWAを活用するメリットを紹介します。
LPWAとは
LPWA(Low Power Wide Area)は、低消費電力で広範囲にわたる通信を可能にする無線通信技術の総称です。
IoT(Internet of Things)の普及に伴い、多くのデバイスがインターネットに接続されるようになりましたが、僻地や山間部では安定した通信が難しかったり、高いコストがかかってしまったりという課題がありました。これらの課題を解決するために開発されたのが、LPWAです。
例えば、電気の使用量を計測するスマートメーターの場合、対象地域の建物への大量接続を可能とする広域性、長期間利用できる省電力性などの要件に対応する必要があります。
接続スピードよりも、多くの端末を同時に接続できる収容性の高さが重要であり、そこで注目を集めているのがLPWAです。
LPWAは、従来の無線通信技術と比べて省電力かつ長距離通信が可能であり、コストも抑えられることから、スマートシティ※や農業、物流など、さまざまな分野での応用が期待されています。
※スマートシティ:先進的技術を活用することでサービスを通じて各地域の利便性を高めることを目的とした都市。
LPWAの特徴
LPWA(Low Power Wide Area)の特徴は、次の3つです。
- 低消費電⼒
- 広いサービスエリア
- 低コスト
それぞれ具体的に説明します。
低電力
LPWAは非常に低い消費電力で動作するため、バッテリー駆動のセンサーやデバイスに適した技術です。
一般的な電池1つで数年〜数十年の動作が可能な省電力性が備わっています。
これにより、電池交換やメンテナンスの頻度が大幅に減少し、長期間にわたり安定した運用が可能となります。
広範囲
LPWAの通信可能距離は数km〜数十kmです。
従来の無線通信システムであるWi-Fiの通信可能距離は100〜300m程度、Bluetoothは10〜100mのため、LPWAがいかに広域性に優れているかが分かります。
これにより都市部から郊外、さらには山間部や農村地域においても、安定した通信を維持できるため、さまざまな地理的条件への対応が可能となります。
低コスト
LPWAは、ハードウェアコスト、接続コストともに安いと言われています。
例えば、フランスのグローバル通信事業者が提供するLPWAのSigfox(シグフォックス)は、端末1台あたりの通信料金が年100円〜という低価格なプランを提供しています。
低コストで大量デバイスの接続が可能なため、大規模なIoTシステム構築にも適した技術なのです。
LPWAの種類
日本のLPWAは、基地局の設置や無線局の免許が不要な「アンライセンスバンド」と、無線局免許が必要な「ライセンスバンド」の2種類に分類されます。
アンライセンスバンド
アンライセンスバンドは、特定の周波数帯を免許不要で利用できるため、非セルラー方式とも呼ばれています。
代表的なLPWA規格としては、前述したSigfox、LoRaWAN(ローラワン)、ZETA(ゼタ)、ELTRES(エルトレス)が挙げられます。
アンライセンスバンドは、ライセンス費用がかからず自由に利用できるため、コストを抑えた導入が可能です。
ライセンスバンド
ライセンスバンドは、無線局免許が必要なLPWA規格で、セルラー方式とも呼ばれています。
携帯通信事業者が提供する周波数帯を使用する通信方式で、代表的な規格としてはNB-IoT(Narrowband IoT)やLTE-Mが挙げられます。
現在スマートフォンで使用されているLTEを用いるため、信頼性とセキュリティに対する安心感があり、特に都市部での利用や高い信頼性が求められるIoTシステムに適しています。
LPWAの活用事例
低コストで省電力性に優れ、長距離かつ長時間の通信を実現させるLPWAは、さまざまな分野で活用されています。
- 高齢者の見守り(ドアセンサーやベッドセンサーによる検知・発信)
- 子どもの見守り(GPSによる位置情報の発信)
- 河川・ため池の水位管理(水位の自動取得・発信)
- 施設園芸におけるハウスの環境管理(温度、湿度の自動取得・発信)
- お茶の栽培管理(土壌環境指数の自動取得・発信)
- 鳥獣害対策(仕掛けた罠の位置情報の発信)
- 送迎バス運行状況の確認(GPSによる運行状況の発信) など
出典:埼玉県「IoT・LPWAに関する事例紹介」
加えて、LPWAの活用は前述の「ライセンスバンド」を中心に、LPガス配送においても進められています。
現在、LPガスの配送業務では、ガスメーターの検針値や過去の消費実績から容器内のガス残量を予測して、配送計画を作成しています。
しかし、予測値はあくまでも予測であり、正確なガス残量を把握できるわけではありません。
ガス切れのリスクを回避するには、ガス残量が完全になくなる前に交換する必要があるため、その分配送頻度が増えてしまうという非効率さが生まれていました。
このような課題を解決するために、LPガスの検針メーターにLPWAシステムを設置し、予測値ではなく正確な数値を把握することで、LPガス配送の業務効率化を目指しています。
LPガス配送にLPWAを活用するメリット
LPガス配送にLPWAを活用するメリットは、主に3つあります。
遠隔での自動検針
広範囲をカバー可能なLPWAを活用すれば、遠隔でのガスメーター自動検針が可能となります。
すでに、LPガス事業者向けにLPWAによる遠隔検針のサービスも複数提供されており、LPガス業務の効率化に役立てられています。
ガス残量をリアルタイムで確認
LPWA技術を用いることで、容器内のガスの残量をリアルタイムで把握できるのもメリットです。
予測値ではなく、実際のガス残量を確認しながら配送計画を作成できるため、ガス切れの防止につながるのはもちろん、ガスが不必要に多く残った状態で容器を交換する非効率さが軽減されます。
LPガス配送回数の低減
前述の通り、遠隔での自動検針やガス残量の把握が可能になれば、検針のために顧客先を訪問する必要はありません。
さらに、容器内のガス残量を見ながら適切なタイミングで交換ができるため、LPガスの配送回数を減らすことができます。
そのため、配送員の残業時間や燃料費の削減といった業務効率化の実現につながる点もメリットと言えるでしょう。
LPWAのデメリットや課題
LPWAは多くのメリットがある技術ですが、導入や運用に際してはいくつかのデメリットや課題も存在します。
例えば、LPWAは低消費電力で広範囲をカバーできる一方で、通信速度は他の通信技術と比べて遅いことが多いです。
そのため、大量のデータを高速にやりとりするシステムには適しておらず、用途が限定される場合があります。また、発信できるデータ量にも制限があるため、注意が必要です。
さらに、LPWAネットワークを構築するためには、専用の基地局やゲートウェイの設置が必要なため、導入コストがかかる点が課題となることがあります。
LPWAと配送管理システムを組み合わせた効率化
LPガス配送にLPWAを活用すれば、遠隔での自動検針やガス残量の把握が可能となり、LPガス配送回数を減らすことができるため、配送員の残業時間や燃料費の削減につながります。
前述のように、通信速度やデータ量はLPWAのデメリットとして挙げられますが、LPガス事業においては大きな影響があるものではありません。
そのため、導入費用の発生により一時的にはコストがかかりますが、中長期的な視点でみれば、生産性向上や人材不足の解消も期待できるでしょう。
また、LPガス配送業務をさらに効率化する方法としては、LPWAで取得したデータをもとに効率的な配送ルートを自動作成する「配送管理システム」の導入がおすすめです。
LPガスの配送計画作成業務は、担当エリア内の道路状況や配送先情報を踏まえて、通常は配送員自身が1人で行います。
しかし、さまざまな条件を考慮したうえでの最適な配送計画の作成は、配送員の経験とスキルに依存してしまう傾向にあり、特にまだ業務に慣れていない新人配送員にとっては難易度が高く、負担になってしまうケースも多いです。
さらに、業務を熟知したベテラン配送員の高齢化に伴い、引継ぎや新人の育成業務が発生することも想定されます。
労働人口減少に伴う人材不足も相まって、人材の柔軟な配置は、LPガス配送ではもちろん、物流業界全体の課題として社会問題にもなっています。
LPWAによる正確なガス残量データをもとに、効率的な配送ルートを自動作成できれば、配送員の作業時間を大幅に短縮することが可能になります。
また、より生産性の高い業務へと集中できるため、結果として業績向上や持続可能な企業経営を実現につながるでしょう。
LPWAや配送管理システムでLPガス配送を効率化しよう
低電力で広範囲をカバーし、低コストで運用できるLPWAは、インフラや産業分野ですでに活用が広がっており、今後もさらなる普及が期待されています。
LPガス配送においても、LPWAの活用が業務効率化や生産性向上につながることは間違いありません。
さらに、効率的な配送ルートを自動作成する「配車管理システム」を組み合わせることで、さらなる生産性向上につながり、人材不足による業績低下も回避できるかもしれません。
LPガス配送業務の効率化を検討している事業者の方はLPWAや配車管理システムをぜひご検討ください。