業務の属人化とは?原因や問題点、対策方法を解説
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現代の日本では、業務やノウハウが特定の個人に依存してしまう「属人化」が問題視されています。
属人化は、企業にとってはリスクとなり、経営の持続可能性に影響を及ぼす可能性があります。企業の生産性向上とリスク管理のためにも、業務の属人化を避け、可能な限り標準化することが大切です。
この記事では、業務の属人化が発生する主な原因とその問題点を掘り下げ、対策方法について解説します。
業務の属人化とは
業務の属人化とは、特定の個人のみが、業務の進め方や内容、進捗状況などを把握している状態のことを指します。業務遂行に必要なノウハウが組織全体で共有されず、個人の知識や経験に強く依存しているため、「属人」という言葉が使われています。
業務が特定の個人に依存してしまうことは企業にとってさまざまなリスクがあると考えられており、改善が必要な状態だと言われています。
業務の属人化は何が問題?
業務の属人化は、企業にとってさまざまなリスクを引き起こします。
ここからは、業務の属人化の問題点やリスク、デメリットについて解説します。
業務効率が下がる
業務が特定の個人に依存する属人化は、その人が不在のときに業務が滞るというデメリットがあります。
例えば、重要な作業や調査が特定の個人を介してしか進まない場合、その人が休暇や病欠で不在となると、「担当者に聞かないと分からない」「この作業が終わらないと先に進めない」など、業務全体の進行が遅れる可能性があるでしょう。
これは、業務効率や企業全体の生産性の低下に直結するリスクと言えます。
業務の負担が集中しやすい
属人化により業務が集中するということは、その分特定の個人へ負担がかかっているということです。
特定の個人が不在になることで業務が進まないとなると、本人もプレッシャーによる過度のストレスや健康問題が発生するリスクがあり、企業としても人材を確保・維持するうえで大きな問題となります。
また、特定の個人に業務が集中することで労働時間の増加にもつながるため、避けたいところです。
知識・ノウハウが蓄積されない
特定の個人だけが業務の詳細を把握している場合、その知識や経験の伝承がうまく行われないまま、その人が退職してしまうと、これまでのノウハウが失われてしまいます。
知識・ノウハウの蓄積がされなければ、新たな人材がその業務を引き継ぐ際に、非常に困難な状況となるでしょう。
人材育成に時間がかかる
前章でもお伝えした通り、属人化された業務は豊富な知識や経験、高い専門性が必要となるので、新人に業務を教えたとしても、業務の全貌を把握するまでには長い時間がかかることを考慮しなければなりません。
そのため、新人が一人立ちするまでは、担当者は自分の業務に加え、新人の育成や指導業務も発生するため、大きな負担がかかってしまいます。
さらに、新たな人材が1人で業務をこなせるようになる前に離職してしまった場合、それまでの人材育成コストや採用コストが無駄になってしまうため、企業にとってのリスクも大きいと言えるでしょう。
柔軟な人材配置ができない
優秀な人材に長く働いてもらうには、従業員に結婚や出産、育児、介護といったライフイベントが起こる可能性があることにも配慮し、仕事とプライベートの両立ができるような柔軟な人材配置が必要です。
しかし、属人化している業務は引継ぎも困難なため、異動などの配置転換やワークシェアなどの実現が難しくなり、組織としての柔軟性が低下します。
業務が属人化する3つの原因
ここでは、なぜ業務の属人化が引き起こされているのか、考えられる原因の3つを解説します。
業務自体の専門性が高い
専門的な知識や技術、専門性を必要とする業務の場合、知識と経験が豊富な専門家や長く勤務するベテラン社員に頼らざるを得ない状況が起こりやすく、結果として属人化してしまうケースは少なくありません。
業務の専門性が高いとは、必要な知識や経験を有する人材が少ないと言い換えることができます。
職場のなかで「あの人にしかできない」「この人に休まれると困る」という業務が存在する場合、すでに業務の属人化が生まれている状態かもしれません。
システム化されていない
属人化しやすい業務の多くは、手書きのノートやExcelなどを使ったアナログ業務です。
アナログ業務では、担当者の独自のやり方で業務が遂行されるケースがあるため、作業方法に個人差が生まれ、属人化が進行してしまいます。
アナログ業務が多い職場の場合、DX化※が進んでいないことが属人化の原因の一つである可能性があるでしょう。
※DX(デジタルトランスフォーメーション):デジタル技術を活用して業務やサービスをより良くするための変革。
慢性的な人手不足
組織内が慢性的な人手不足の状態では、少ない人数で多くの業務を担当することになります。
その結果、業務が特定の個人に依存してしまい、属人化が加速する場合もあります。
「忙しくて教える時間がない」、「マニュアルを作る時間がない」など、新たなスタッフの教育や業務の引継ぎも困難となるケースが多いです。
業務の属人化を防ぐ3つの対策方法
業務の属人化を防ぐには、事前に適切な対策をすることが重要です。
続いては、業務の属人化を防ぐ具体的な対策方法を3つ紹介します。
業務フローを可視化する
業務フローが不明瞭だと、第三者が業務に参加しにくくなるため、まずは各工程において可視化することを心がけましょう。
必要な業務を明確にし、文書や図式にして可視化することで、業務フローに関する理解が深まり、組織全体での把握・介入ができるようになります。
続いてご紹介する業務マニュアルの整備も、業務フローの可視化が進むことで進めやすくなるでしょう。
業務マニュアルを整備する
業務の標準化はマニュアルがあれば容易になります。
完全なマニュアル化が難しい専門的な業務の場合は、部分的にでも手順を文書化しておけば、業務を引き継ぐ際に説明がしやすく、より業務の分担がスムーズに行えます。
ツール・システムを導入する
アナログ業務については、システム化することで標準化できる可能性が高いです。
特定の個人が有する知識や経験に依存していた業務も、アルゴリズムやAIなど、最新のテクノロジーを活用することで自動化できる場合があります。
例えば、タスク管理やペーパーレス化など幅広い業務に活用できるツールを導入すれば、さまざまなアナログ業務をシステム化できるかもしれません。
また近年では、配車管理のような専門性の高い業務をシステム化できるツールもあります。
自社の業務に適したシステムを導入し、業務の標準化を実現しましょう。
効率化ツール・システムを導入して属人化を解消しよう
属人化を防ぎ、業務を標準化することは、企業が取り組むべき重要な課題の一つです。
社内に属人化している業務がある場合には、業務フローの可視化やマニュアルの作成、ツール・システムの導入など、属人化解消に向けた取り組みを行うことをおすすめします。
ツールやシステムの導入は初期投資が必要ですが、長期的に見れば業務効率化や生産性の向上につながり、企業にとってもメリットがあると言えるでしょう。
柔軟な人材配置、知識・ノウハウの蓄積、業務効率化などを目的とした属人化の解消には、ぜひツール・システムの導入によるDX化をご検討ください。